昔、都から遠く離れた森にひとりの猟師が住んでいた。彼は森でとれた獲物を車に積み込み、その肉を都で売りさばいて暮らしを立てていた。ある日のこと、彼の荷車は都の外れの四つ辻を通りかかったが、その時四人の長者の息子たちがそこに座り込んで遊んでいた。彼らのひとりが肉を載せた猟師の車を見て、ほかの三人に言った。
「おい、見なよ。猟師が肉を売りにきたぞ。あいつからせしめてやろうじゃないか。最初にぼくがやってみるよ」
「それはおもしろい。やってみなよ。さあ、もらってこいよ」
もうひとりがけしかけたので、その子は勇んで猟師に近寄っていった。
「おい、おっさん、おいらに肉をくれないか」
その乱暴な言い草に、猟師はその子をにらみつけて言った。
「人になにかをねだるんだったら、少しは丁寧な言葉を使ったらどうだ。なんだい、その態度は。どこの長者の息子だか知らないが、口のきき方も知らないようじゃろくな大人になれんぞ。欲しけりゃ、この肉でも持っていけ。お前の言葉遣いにはこの臓物がふさわしいぞ」
そう言って猟師は臓物を投げ与えた。その子はさすがにしょんぼりして仲間たちのところにもどり、とても食べる気にはなれないような血だらけの臓物をさし出した。すると、それを見て仲間のひとりが尋ねた。
「君はなんと言ってねだったんだい」
「おい、と言ったんだ」
「よし、今度はぼくがもらってこよう。見ていろよ」
その子は猟師に近づいていった。
「兄さん、すまないけど肉を一切れください」
「君の言葉遣いにはこの肉がふさわしいよ。さあ、持っていきな」
猟師はそう言って獲物の手足をさし出し、続けて言った。
「君はわたしのことを兄さんと呼んだね。兄は人間の体に例えれば手足にあたると昔からいわれているんだ。さあ、いいから持っていきな」
獲物の手足をもらってもどってきた仲間を見て、もうひとりの子が尋ねた。
「君はなんと言ってねだったんだい」
「兄さん、と言ったよ」
「よし、ぼくももらってこよう」
三番目の子供が猟師に近づいた。
「お父さん、わたしにも肉をください」
彼は猟師の反応を見ながら恐る恐る言った。
「子にお父さんと呼びかけられれば、父の心臓はうれしくて震えるものだよ。君はその言葉を、お世辞なんかじゃなくて本当のお父さんに心から言いなさいよ。いいかい、君には心臓の肉を上げよう。お父さんといっしょに食べなさい」
猟師は優しくそう言って、心臓のほかにおいしそうな肉をつけて渡した。
「君はなんと言ってねだったの」
最後に残った子が尋ねた。
「お父さんと呼びかけたら、お世辞でなくて本当のお父さんにそう言いな、と言って肉をくれたんだ。ぼくもそう思うよ」
「あの猟師はいい人なんだね。だまそうとしたぼくたちはなんてばかだったんだろう。そうだ、友達になってもらおう」
最後の子はそう言って猟師のところに走っていった。
「おじさん、友達になってください。ぼくたちは悪いことをしようとしていました」
子供は心からそう言った。
「わたしは森の中で暮らすようになってから、友達と言われたことなんか一度もなかった。君の言葉はとてもうれしいよ。口では言えないほどだ。わたしの持っているもの全部を君に上げよう」
こう言って、猟師は車の柄を持ち上げた。
「さあ、家までこの肉を車ごと運んでいこう」
彼は車を引いて、その子の家まで運んでいった。その子の家族は猟師を手厚くもてなし、彼の妻子をも呼び寄せていっしょに友達として暮らすよう勧めた。そして、庭園に猟師の家族のための家を建ててやり、生涯仲の良い友達として喜びや悲しみをともにしたという。
(ジャータカ三ー五)