ライオンとトラ

昔、大きな深い森があった。そこにはライオンのスダータとトラのスバーフ、それに一匹の山犬が住んでいた。山犬はいつもライオンとトラに取り入って、彼らの食べ残しをもらって暮らしていた。おかげで山犬は丸々と太っていた。

ある日、山犬はいつものように食べ残しをもらって満腹し、ごろりと寝そべって考えた。

「今までにおれは、ずいぶんいろいろなごちそうを食べたものだなあ。シカも食べたし、イノシシも食べた。しかしこのおれさまも、ライオンとトラだけはまだ食べていないなあ。やつらの肉は、いったいどんな味がするのだろう。一度は食べてみたいものだ。なにかいい手はないものだろうか……。」

山犬は、あれこれ悪知恵の限りを尽くして考えた。

「そうだ、いい考えがある。スダータとスバーフをけんかさせたらどうだろう。二頭とも共倒れになればしめたもんだ。」

山犬は早速ライオンのスダータのところへ出かけた。

「ライオンのだんな、こんにちは」

ちらりとスダータの顔色をうかがってから、山犬は言った。

「だんなは近ごろ、トラさんと仲がお悪いようですね」

「なんでそんなことを言うんだ」

スダータは不きげんになって言った。

「だってトラのやつ、あなたの悪口ばっかり言ってますよ。ライオンなんかだめなやつだって。毛並みも体つきも氏素性も、どれをとってもトラの十六分の一にも及ばないって」

誇り高い性質のスダータは、山犬をどなりつけた。

「消えうせろ、山犬。わたしの親友スバーフはそんなことを言うやつではない。このうそつきめ」

がんとして答えるライオンの前から引き下がると、山犬は舌打ちし、今度はスバーフのところへ出かけていった。そして同じことを言った。

トラはびっくりし、早速ライオンのところへ行って問いかけた。

わたしの親友 スダータよ

お前はほんとに 言ったのか

毛並みや力 体つき

わたしが君にかなわぬと

スダータはこれに答えて歌を唱えた。

わたしの親友 スバーフよ

心卑しい 山犬は

おんなじことを わたしにも

告げ口したが 我が友よ

君を信じる わたしなら

なんで虚言を 信じよう

君とわたしは 友達で

平和に日々を 過ごしたが

もしも平和な その日々を

壊す気ならば もう二度と

ともに住むのは 望まない

他人の言葉を 吟味する

知恵ももたずに 簡単に

信ずる者は 友達も

すぐに離れて しまうだろう

敵もたくさん できるだろう

勝手気ままで だらしなく

友を疑い 欠点を

探すやからは 友じゃない

わずかな疑問も はさまずに

母に抱かれて すやすやと

眠る子供の 無心さは

壊すことなど できぬもの

そんな友こそ 本当の

友と呼ぶのに 値する

自分の浅はかさがすっかり恥ずかしくなってしまったスバーフは、スダータに心から謝り、二頭はまた仲良く森の中で暮らした。

悪巧みに失敗した山犬は、スダータとスバーフの怒りを恐れて遠い場所へ逃げていった。そして二度と森へは帰らなかった。(ジャータカ三六一)

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