欲の深いウミガラス

昔、大海原に海の神がいた。ある時、一羽の欲の深いウミガラスが、

飲むな、飲むな、海の水を飲むな。おれが飲むんだ。飲むんじゃないぞ。

と鳴きながら、海の上を飛び回っていた。ウミガラスが得意そうに魚や鳥の群れに触れ回っているのを見た海の神は、この鳥に向かってうたを唱えた。

あちらこちらの 海の上

自由気ままに 飛び回り

好きほうだいを わめき立て

魚や鳥に 勝手を言って

波の上で 威張ってる

お前はいったい 何者だ

ウミガラスは、海の神のうたを聞いて答えた。

飲んでも飲んでも 飲み足りない

おれは飲んべえ ウミガラス

海は王さま 水の王

一滴残らず その水を

おれは一人で 飲み干したい

ゴクリゴクリとのどを鳴らしながらウミガラスは甲高い声でうたった。それを聞いた海の神は、そこで、次のうたを唱えた。

大海原の 海の水

たとえ一滴 引いたとしても

それはほんの ちょっとの間

次から次に 水のわく

海を飲み干す 者はない

強欲者でも 飲み干せない

うたい終わると、海の神は目をむいて姿を現した。海の神の恐ろしい顔を見たウミガラスは、慌てふためいて遠くへ飛んでいってしまった。

ジャータカ146

『仏教説話大系』第5巻 「欲深いウミガラス」より
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