インドではカラスとフクロウは仲が悪いといわれているが、その事の起こりは次のような出来事にあった。
昔、人類や動物たちがこの世に出現したころ、人間たちはみんなを取りまとめ率いてくれる人物を自分たちの中から選びだそうと考えた。人間たちは相談して、上品でしかもいかめしく、あらゆる点で優れている人物を王として選んだ。
人間たちが王を選び出したことを知った動物たちは、負けてはいられないと大急ぎで集まった。そして一頭のライオンを王に選び出した。遅れをとってはならないと、海の魚たちもアーナンダという魚を王に選び出した。
すると、鳥たちもヒマラヤのある岩の上に集まって、どの鳥を王に選ぼうかと相談しあった。
王さまにぴったりの鳥はワシだ
いや、小さいけれど、おとなしいハトがいい。それとも美しいクジャクか、そのどちらかだ。
いっそのこと、どうだろう。小さいけれどもフクロウなら威厳もあり頭も良さそうだし、ぴったりじゃないか。
みんなの意見は、ほぼフクロウに決まりかけた。ところがその時、一羽のカラスが口をはさんだ。
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ちょっと待ってもらいたい
カラスはさも不満そうに鳴きあげ、うたを唱えた。
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みんなの意見で フクロウが
我らの王に なるという
はっきり言って このおれは
絶対反対 反対だ
今度は、鳥たちがカラスに向かってうたい返した。
反対するなら そのわけを
筋道立てて 話しなさい
若さあふれた あなたには
知恵もあふれて いるようだ
そこでカラスは、うたで答えた。
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みんなの幸せ 望むから
フクロウ王に 反対だ
怒っていない 普段でも
ようくご覧よ あの顔を
どんぐり眼に しわの顔
もしも怒った その時は
きっとすごいぞ あの顔は
カラスはそう言うと、
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おれは、フクロウなんて大きらいだ
と大声で叫びながら、空高く飛び去っていった。これを聞いたフクロウは、顔を真っ赤にして怒った。そしてすぐにカラスの後を追って飛び立ったていった。
カラスとフクロウとの仲が悪くなったのはそれからである。
後に残った鳥たちは、長い時間をかけて意見を出し合った。その結果、黄金のガチョウを王に選び出したということである。
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ジャータカ270
『仏教説話大系』第6巻 「鳥の王」より