いかさま賭博師

昔、バーラーナシーの都に二人のばくち打ちが住んでいた。二人は好敵手で、いつも勝負を争っていた。

しかし、一人のばくち打ちはずる賢く、負けそうになると目にも止まらぬ速さでサイコロを口の中へほうり込み、こう言うのだった。

サイコロがなくなったぞ。勝負はもうやめだ、やめだ。

そんなことが何度も続くと、もう一人のばくち打ちは考えた。

よし、一度懲らしめてやろう

そしてある時、何度も何度もサイコロに毒を塗り込み、それを乾かして見かけは普通のサイコロと変わらないようにして勝負をいどんだ。

そんなこととはつゆ知らず、ずるいばくち打ちは負けが込み始めると、いつものとおり知らん顔をして毒の塗られたサイコロを口の中へほうり込んだ。

ところが、しばらくすると毒が溶け出し、ばくち打ちは胸をかきむしって苦しみだした。その姿を冷ややかに見ていたもうひとりのばくち打ちは、うたを唱えた。

毒の塗られた サイコロを

飲んで苦しむ いかさま野郎

胸かきむしる 苦しみは

自分で招いた 落とし前

ばくち打ちはそう言ってから、男に用意しておいた薬を与えて毒を吐かせた。回復した男は自分の愚かさを思い知り、二度といかさまはしないと誓ったということである。

ジャータカ91

『仏教説話大系』第6巻 「いかさま賭博師」より
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